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あの女がますます老いて帰ってきた。


by mucky55

3.11 その日 【 3 】

オッサン君が帰って来てホッとしたけど
母とはまだ全然連絡が取れない。
家電は通じたり、通じなかったり(Aちゃんの電話が通じてホントよかった!)
携帯は全く役に立たなかった。

薄暗いライトの中、さてどうしようとなった時
とにかく何か食おうぜ。腹が減った」と言われ
6枚切り食パン1斤と納豆を持って来た。
スッピンのおパンに納豆をかけて食べた。

私は1枚でもうたくさんだったが
オッサン君はぺろっと2枚食べ、3枚目に手をのばしたので

「火を使わないで食べられる食料は、もうそれだけだからね」

と言うと、さすがに食べるのをやめた。

病院の帰りにガソリンを満タンにして、買い物をしようと思っていたので
私の車はガソリンがあと1目盛ちょっとしかなく
食料も本当になにもなかったのだ。

信号が作動してない上に、あちこちが通行止めになり
とにかく大通りはどこも死ぬほどの渋滞らしい。
うちの窓からも真っ暗い街に、道路だけが血管のように真っ赤なのが見える。

母の家まで行くのは無理そうだ。
そこでとにかく寝る事にした。
一旦寝て、夜中の2時頃に起き、わき水が湧いてるところに
トイレ用に水を汲みに行き、その頃にはすいているだろうから
母の家に行ってみる事にした。

真っ暗いなか、服を沢山着込んだまま
(いつでも起きて逃げられるように)
布団に手さぐりでもぐりこもうとしたオッサン君が
何か異物を発見した。ひょいとつまんで目の前に持っていった。

あれ?なんだこれ…うわーーー!ペソのウンコじゃねえか!

多分恐怖でおかしくなったペソが
いつのまにかそこで脱糞してしまったんだろう。
それを知らずに素手でつかんでしまったオッサン君。

私でなくてよかった・・・

断水で水は出ない。
ウェットティッシュで何度ぬぐっても
オッサン君の指からウンコの臭いが消える事はなかった。

ウンコ臭い指のまま布団にもぐったがはやいか
オッサン君はあっという間にぐーすか寝てしまった。
15分毎に続く余震の中、爆睡だ。
つくづく羨ましい・・・この図太さ。

一睡も出来なかった私は2時になるのを待ってオッサン君を揺り起こす。
いつもなら空腹と眠気はオッサン君を不機嫌にするが
さすが非常時、ムクッと起き上がり文句も言わずにエンジンをかけに行った。

うちから15分弱の、ある山道の岩肌?から竹筒が出ており
そこからこんこんと水が湧いていた。

「いつもここ通るたびに、いざという時はここに汲みに来ようと思ってたんだ」

とオッサン君が言った。捨て目の利くヤツだね。
飲めるかどうかはわからない、だけどこれでトイレが流せるし
いろいろと助かる。ありがたい。

20リットルのポリ容器に水を汲み
持って来た石けんでオッサン君は手を洗った。

「やっとウンコ臭が消えた!いがった!」

と嬉しそうだった。
その後、母の家に向かったが、国道6号線まで行って愕然とした。
ものすごい渋滞!!しばらく乗らないでみていたが、ピクとも動かない。
これじゃあ母の家に辿り着くまで何時間かかるかわからないし
最悪途中でガソリンがなくなるかも知れない。

幸い、母の住む地区で家が全壊したとか
死者が出たという話は地元ラジオで流れていない。
無事と信じて、その晩は引き返した。





私の311は、そんな風にして終った。

母と連絡が取れたのは2日後。
ブロック塀が倒れたり、玄関のドアが開けづらくなったが
母は無傷で元気だった。
今でもまだ水が出ない中、頑張っている。

翌日は炊き出しに並んだりした。
置いておいても腐るだけ!と、メガドンキというスーパーが
野菜類やお惣菜類、果物を無料で配っていた。

太っ腹だぜメガドンキ。一回も買った事ないけど…
日常が戻ったら恩返しに買い物に来るよ。


友人は、津波にやられて家を失った。
半壊して車で寝泊まりしている友人もいる。
ゴーストタウンになったいわき市で
逃げ出さずに老人介護の仕事を頑張っている友人もいる。

みんな大変だけど、めげずに頑張っている。

311を忘れずに、でも早く笑い話に出来るように
地震を肴に皆でうまいビールを飲める日を楽しみに
頑張って行こう!


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by mucky55 | 2011-03-22 16:13 | 震災